贈与を巡る旅
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作品情報
『世界は贈与でできている』で大きな反響を呼んだ哲学者・近内悠太が、新たな問いを携えて日本各地を旅する。「問題を解決すること」が絶対的な善とされる現代社会。しかし、私たちは本当に問題を解決するためだけに生きているのだろうか。本書は、「生きのびる(survival)」ではなく「生きる(life)」とは何かを、「贈与」という視点から問い直す一冊である。舞台となるのは、岡山・上山、沖縄・伊是名島、奈良・春日若宮おん祭、香川・琴平。著者はその土地に暮らす人々と出会い、働き、食卓を囲み、祈り、祭りに触れるなかで、お金や交換では測れない「贈与」の営みを見つめていく。そこには、自然から受け取った恵みを分かち合う暮らし、人と人を結ぶ儀式、誰かの幸せを願う祈りなど、現代社会が忘れかけた豊かな関係性が息づいている。贈り物は取引ではない。誰かを思い、手渡す行為そのものが表現であり、人は贈与を通じて小さなアーティストになる——そんな著者の眼差しは、私たちの日常の見え方を静かに変えていく。旅のエッセイと哲学的考察が美しく交差する本書は、『世界は贈与でできている』『利他・ケア・傷の倫理学』に続く実践編ともいえる作品である。問題解決だけでは満たされない時代に、「文明」と「文化」、「交換」と「贈与」、「生きのびる」と「生きる」のあいだを歩きながら、私たちが本当に大切にしたいものは何かを問いかける。読み終えたとき、世界は少しだけあたたかく、そして生きることは少しだけ豊かに感じられるだろう。
